新型コロナウイルス不活化試験 ―プラーク法を用いた抗ウイルス試験について

新型コロナウイルス不活化試験 ―プラーク法を用いた抗ウイルス試験について

新型コロナウイルス、サーズウイルス、トリインフルエンザウイルス、ノロウイルス等、私たちの健康を直接脅かす恐れがあるといわれるウイルスの話題が世間を席巻しています。今回は、不活性化試験の概要や新型コロナウイルスの不活性化に関する事例をご紹介します。

感染から身を守るには

これらの不安から少しでも安心感を得たいという消費者のニーズを反映して、消毒剤、殺菌剤のほかにもマスク、空気清浄機などウイルス対応を謳ったものが数多く出ています。

では、ウイルスとはそもそもどのようなものなのでしょうか。また、その効果はどのようにして調べることができるのでしょうか。

ウイルス不活性化試験の概要

新型コロナウイルスの不活性化試験について理解するためには、まずウイルスの定義や測定方法について理解する必要があります。

ウイルスとは何か

ウイルスは大きさ数十~数百ナノメートルの粒子で、カプシドと呼ばれる膜とその中の遺伝子(DNA または RNA)により構成されています。

ウイルスの測定の方法

ウイルスは非常に小さな粒子で、通常の光学顕微鏡では観察することはできません。

また、培養するためには、各ウイルスの宿主として特定の細胞が必要です。このような性質を持つウイルスの測定は、限られた方法でしか行うことができません。

培養細胞に感染させてウイルス量を定量する方法としては、TCID50(Median tissue culture infectious dose、50%感染量)を測定する方法や、プラーク法等があります。

不活化試験とは

『不活化』とは『感染性を失わせること』を指します。すなわち、『不活化試験』とは『感染性を失わせるために行う試験』を差します。

今回この記事では『新型コロナウイルス不活化試験』の他社・大学の事例を紹介し、当社が行っている『新型コロナウイルス不活化試験-プラーク法を用いた抗ウイルス試験』をご紹介します。

『新型コロナウイルス不活化試験に対する現状』を知るための一助になれば幸いです。

プラーク法とは何か

プラーク法は、『ウイルスに感染すると細胞の形状が変化する現象(細胞変性)を利用した ウイルス量の測定法』です。

培養細胞に検体から洗い出したウイルス液を接種したあと、全体を寒天のようなゲルで被い培養します。

ウイルスの感染により宿主細胞が損傷を受けている場合はゲルの色素を維持せず、感染した部分が白い斑点として現れます。

その斑をプラークと呼びます。プラークを数えることで、抗ウイルス性を評価します。

【出所】nite『抗ウイルス評価手法』を元に筆者作成

https://www.nite.go.jp/data/000108456.pdf

【事例1】新型コロナウイルスに対する「ソウジスキー」・「ジョキンスキー」をプラーク法を用いた不活化試験

山口大学共同獣医学部にて新型コロナウイルスを用いて 2 種、「ソウジスキー」「ジョキンスキー」のウイルス不活化試験をプラーク法を用いて実施した結果、同ウイルスへの不活化を確認できたとのことです。

ソウジスキーもジョキンスキーも10倍、5倍希釈のいずれにおいても99.99%以上の不活化効果が見られるとのことでした。

※希釈:溶液に水や溶媒を加えて薄めることを指します。

【引用元】山口大学共同獣医学部(2021). 新型コロナウイルス不活化試験結果報告書
https://www.ipros.jp/ebook/1944563/

【事例2】薬用消毒液による新型コロナウイルスの不活化試験

コスメテックスローランド株式会社は、新型コロナウイルスのウイルス不活化試験を外部研究機関(株式会社 食環境衛生研究所)にて実施し、次の効果を確認しました。

【試験資材】
①薬用消毒L202101(薬用消毒ジェル 有効成分塩化ベンザルコニウム0.05w/v%)
②薬用AL消毒液2021402(薬用弱酸性アルコール:エタノール76.9~81.4Vol%)
③AL製剤202103(食品添加物アルコール製剤:アルコール77v/v%(70w/w%)製剤

【確認された効果】

新型コロナウイルスに30秒間接触させると、試験資材②③は99.9%以上、試験資材①は99.7%以上のウイルス不活化効果があることが判明しました。

【引用元】BY ROLAND『当社製品の新型コロナウイルスへの不活化効果について』

https://www.c-roland.co.jp/byroland/skn.html

【オミクロン株も対応】新型コロナウイルス不活化試験を実施しています

 当社では『新型コロナウイルス不活化試験 -プラーク法を用いた抗ウイルス試験』を行っております。詳細は下記の通りになります。

【試験施設の特徴】
国内国立大学での試験となります。
*試験先は推進の場合開示させていただきます。

【試験対象品】
プラスチック・金属等のプレートでの試験の他、アルコール・洗剤・オゾン水等の液体、光触媒製品など幅広く対応しております。

【試験結果のご利用に関して】
HP、LP、営業資料等、広くお使いいただけます。

*大学での試験となるため、データ公開前に大学ご担当者様から表現に齟齬がないかチェックをさせていただきます。

新型コロナウイルス 対応種類

下記いずれか1種、もしくは複数でもご対応可能です。

従来株、イータ株、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、オミクロン株、その他、こちらの試験機関ではインフルエンザウイルスA型、ネコカリシウイルス(ノロウイルスの代替ウイルス)も保有しております。

*詳しくは下記ホームページよりご覧ください。

【オミクロン株も対応】新型コロナウイルス不活化試験

おわりに 医薬品のベンチャーに対する実用化開発とは

今回この記事では『新型コロナウイルス不活化試験』の他社・大学の事例を紹介し、当社が行っている『新型コロナウイルス不活化試験 -プラーク法を用いた抗ウイルス試験-』をご紹介いたしました。

コロナウイルスの感染は世界中に広がり、今後ますます『新型コロナウイルス不活化試験』に対する需要が増えていくでしょう。 

そのためには大企業のみならず、ベンチャー企業も積極的に参画し、『新型コロナウイルス不活化試験』に取り組む必要があります。

そのためには医薬品のベンチャーに対する実用化開発を支援することで、ベンチャーによる新薬の創出件数を増加させ、起業経験者の将来的な再起業なども含めた創薬ベンチャーエコシステム全体の底上げを図ることが望まれます。

【参考文献】
 1) 厚生労働省健康局結核感染症課:感染症法に基づく消毒・滅菌の手引き(2004)
 2) Erwin Duizer, Paul Bijkerk, Barry Rockx, Astrid de Groot, Fleur Twisk, and Marion Koopmans : Inactivation of Caliciviruses, Applied and Environmental Microbiollogy, 70, 4538-4543(2004) 

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