意外と知らない?ドラフトの色々

意外と知らない?ドラフトの色々

実験に使う設備、器具。実験している側からしたら、いつも当たり前に見る、それらの道具たち。
でも、「お隣の」実験室で使っている設備のこと、知っていますか?
今回は『ドラフト』について書いていきます。

「ドラフト」とは

通称ドラフト、あるいはドラフトチャンバーと言う名前で知られる、化学系の実験室にはよくある透明な扉が付いた棚みたいなもののことです。

正式名称は局所排気装置、といいます。その中でも、「ドラフト」と言った場合は「囲い式」と呼ばれているものを指すことが多いです。

実はドラフトは和製英語であり、英語では”fume hood”と言いますのでご注意を!

ドラフトのタイプと用途

何のために使うものなのか、と言えば、人体に有害な物質を実験作業中に吸い込まないようにするための物です。

実験作業中、人体に有害な物質が発生することは、特に化学合成系の実験ではよくあること。合成する際に発生するだけではなくて、そもそもの合成の原料自体も人体に有害だったりすることも。

そこで、作業者が蒸気や飛沫を吸い込まないようにするために、ドラフトの中で作業することが労働安全衛生法で義務付けられているのです。

因みに、家庭用のレンジフードみたいなタイプのキャノピー型、実験台の下に排気口がついていて、そこから吸い込んでくれるスロット型などタイプも色々ありますが、やはり箱で全部囲うように覆いがしてある、ドラフトが一般的でしょう。

こちらで扱うのは、主に急性毒性が低いけれども慢性毒性はある。あるいは、作業する手の皮膚についても、すぐにただれたりせず吸収しにくい物質を扱う場合が多いでしょう。

因みに急性毒性、皮膚からの吸収率の高い物質を扱うために完全に締め切った状態で作業する手すらも暴露しないように、外側についている手袋越しに作業するグローブボックスもあります。これもドラフトの一種です。

また、バイオの研究で使われる「安全キャビネット」もドラフトチャンバーの一種です。(クリーンベンチと安全キャビネットについては次回以降に!)

ドラフト使用時の注意点

① 制御風速を確認する

ここで注意して欲しいのは、制御風速がどのくらいあるかということです。制御風速は特定化学物質障害予防規則(通称、特化則)で決まっています。

制御風速とは、簡単に言ってしまえば、どの程度空気を吸いだすことが出来るかを現した数値です。

ご家庭のレンジフードで例えていえば、換気扇の強さです。換気扇が弱ければ、いつまでも部屋の中には料理のにおいが籠ったままです。

この時に注意しなければいけないのが、制御風速はドラフトの扉が全開になっているときの風速ではなくて、第一段階ちょっと腕が入るかな……、というところで止まったところの風速を指します。

全開にしてしまっては、空気を引く力が弱まってしまって、暴露防止の意味がありません。逆に引く力が強ければ強いほどいい、と言う訳でもありません。強すぎる気流はすぐに乱流を生んで、結局上手く吸い込めずに暴露してしまう危険性もあるのです。

排気だけじゃなくて、吸気とのバランスも重要なのです。

② 排気ファンにについて確認する

ところでドラフトの場合はどうやって空気を吸いだしているのか、と言えば。大体は設備の屋上などに設置されている、排気ファンが吸い出してくれます。

ここで、注意が必要なのは必ずしも「1台のドラフトにつき1台の排気ファンがあるわけではない」ということです。

設備によっては複数のドラフトが、1台の排気ファンにつながっていることがあります。

そういう時に一部のドラフトだけが運転していると、ダクトでつながってるけど運転していない他のドラフトから、気流が逆流してしまうことも……!

お使いのドラフトがどうなっているのか、一度ちょっと見直してみるのもいいかもしれませんね。

③ 排ガス処理装置を確認する

また意外に見落としがちなのが、ドラフトにつけられている排ガス処理装置がどういうものなのか、という点です。

主に「湿式」「乾式」「フィルター式」の3種類があります。

「湿式」はスクラバーと呼ばれる洗浄ユニットがついていて、水が入っています。そこを通すことで酸性や塩基性の物質を溶かして除去して、綺麗になった空気を排出します。
また、「乾式」は活性炭などの吸着剤が入っていて、そこで蒸気になったり飛沫になった有機溶媒を吸着して除去します。
「フィルター式」は粒子状の飛沫物を、フィルターに通して除去します。

この3つは、除去できるものが全く違います。
簡単に言えば、湿式は水に溶けるもの、乾式は水には溶けないもの、そしてフィルター式は細かい粉末を取るためのものです。折角暴露防止策を取っていても、それがそのまま外に垂れ流し、ではいけませんよね。

こちらも一度点検の時に(年に一回の定期自主検査が義務付けられています)、見直してみるのもいいかもしれません。

その他にも、防爆・過塩素酸用・RI(放射性同位体)用などなど、用途に応じた特殊なドラフトもあります。

いかがでしたか?
知っているようで知らないこと、ありましたか?

参考サイト
REHSE「フード屋の魂」様
http://www.rehse2007.com/hoodya_no_tamashii/toppage/index.html

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