公費で購入した研究設備・機器をシェアする方法とは?文科省ガイドラインの詳しい内容を解説

公費で購入した研究設備の在り方については、2022年3月に政府が発行した「研究設備・機器の共用推進に向けたガイドライン」でその方針が示されました。

これにより、これまで基準が曖昧だった研究設備・機器のシェアについて研究機関側でも具体的な検討がしやすくなりました。

そこで今回は、同ガイドラインの内容を中心に、研究設備・機器をシェアする方法やメリットについて詳しく解説していきます。

参考:文部科学省|研究設備・機器の共用推進に向けたガイドライン

公費で購入した研究設備・機器の取扱い

ここではまず、公的な財源を基にした研究設備・機器の取扱いについて解説します。公的な経費が投入された研究設備・機器をシェアすることは可能なのでしょうか。

研究設備・機器は共有が原則

ガイドラインによると、公的な財源を基にした基盤的経費により整備する研究設備・機器は、共有化の検討を行うことが原則とされています。

また、同ガイドラインでは競争的研究費についての言及もあり、これらの経費が投入された研究設備・機器であっても、財源が公的な性質を持つ点を踏まえ、原則として共用化の検討を進めることが重要であるとされています。

なお、競争的研究費により購入した研究設備・機器の活用方法については、別途、文部科学省の資料「競争的研究費における各種事務手続き等に係る統一ルールについて」に詳細な記載があります。

参考:文部科学省|競争的研究費における各種事務手続き等に係る統一ルールについて

プロジェクトの期間内でも共用化可能

ガイドラインでは、各機関がプロジェクト期間中は共用化できないという認識を持っており、共用化が進んでいないことが課題として挙げられています。

その上で、各機関の研究力強化のためにも、競争的研究費で整備される最新の研究設備・機器も、プロジェクトの終了を待たずに共用化することが可能であり、推進するべきものとされています。

共用化にあたっては、プロジェクトに支障のない範囲で、利用状況や、汎用性・利用ニーズ等を考慮し、積極的に共用を図っていく必要があります。

設備共用による各プレイヤーのメリット

研究設備・機器の共有は、利用者だけでなく、提供側にもメリットがあります。ここでは、主要な3つのメリットについて紹介します。

研究者のメリット – 目標達成に向けた資源の効果的な活用

研究者の能力を活かした創意ある研究成果を創出するには、十分な研究設備・機器が必要です。しかし、若手研究者など、必ずしも潤沢な研究資金を持たない研究者にとっては、高額なこれらの設備・機器を自力で整備することは非常に困難です。

研究者の研究環境の改善のためには、研究機関が有する研究設備や機器、予算、人材などの経営資源を最大限活用することが不可欠です。

研究設備・機器へのアクセスを向上することで、研究者が各々の研究パフォーマンスを高めることにつながります。

産学連携推進部署のメリット – 外部連携の発展

研究機関が研究設備・機器を他機関と共用することで、他の研究者と連携を強め、新たな共同研究を推進することができます。

また、産学連携や地域連携を行うことで、外部資金の獲得、先端技術の普及・継承、人材交流の推進を図ることができます。外部機関と連携を進めれば、これらのネットワークが産業界や地域・社会との共創を図る上でのハブ・窓口としての機能を果たしてくれるでしょう。

出典:研究設備・機器の共用推進に向けたガイドライン(18p)

連携による外部資金の獲得としては、例えば以下のように研究設備・機器の利用料金を設定する例が見られます。

  • 研究設備・機器の自律的な運営を図る観点から、運用に関するコストを可視化し、相当の利用料金を設定
  • 産学連携等を促進する観点から、利用料金の割引や無償化、包括契約を行う

経営層のメリット 設備の効率的な管理・運用

3つ目としては、効率的な管理・運用による技術的・金銭的メリットがあげられます。

現在、多くの研究設備・機器が特定の研究室単位で管理・運用されているため、研究者自らがこれらを管理・運用せねばならず、本来業務である研究に充てる時間が圧迫されています。

そこで、研究設備・機器を組織的に管理することにより、体系的な保守管理が可能となり、研究者が研究時間を捻出できるようになります。

管理方法としては、以下の方法が考えられます。

  • 研究機関や部局の一定程度の規模において汎用的な研究設備・機器を物理的に集約する
  • 各部局がそれぞれに整備・運用する研究設備・機器をシステム等でバーチャルに集約する

また、研究設備・機器を組織的に管理し、メンテナンスすることで、外部利用の可能性も広がります。ガイドラインでは、研究機関全体が共用設備の持続的・自律的な運用を図るためには、具体的に以下のような取り組みが求められるとされています。

  • 共用設備の運用に係る全てのコストを可視化すること
  • 共通のシステムや利用料金を整備すること
  • 共用による利用料収入を集約すること
  • 受託分析・受託試験を組織的・体系的に推進すること

このように、必要なコストを可視化し、利用者に提供できる価値を勘案して料金を設定することが重要です。

出典:文部科学省|研究設備・機器の共用推進に向けたガイドライン(28p)

共用システム構築のポイント

最後に、共用システムを構築するポイントとして、以下の3つについて解説します。

共用の範囲・共用化のプロセスについて

研究設備・機器のさらなる活用や利用者増につなげるためには、研究機関の特性やこれまでの取り組みも踏まえ、実効的な共用の範囲や段階的なプロセスを検討していくことが望ましいでしょう。

具体的な共用システムの共有範囲は、以下のようなアイデアが考えられます。

  • いくつかの部局内での利用
  • 複数の部局やキャンパス等で形成する各拠点内での利用
  • 共通する研究設備・機器群で横串を刺した技術分野の利用

また、共有化のプロセスとしては、以下のような方法が考えられます。

  • 高額な設備・機器が多い分野や、すでに共用化が進んでいる部局から共用の体制やシステムの構築を進め、他部局へ横展開を図る
  • いくつかの部局でそれぞれに共用が進んでいる場合には、情報共有から連携を始め、相互利用やルール・システムの共通化等について検討を進める

共用の対象とする設備・機器の選定について

共有の基本的な考え方として、公的な財源を基にした基盤的経費により整備する研究設備・機器については、原則として共有化を検討するべきです。

公的な財源とは、例えば

  • 国立大学等における運営費交付金
  • 私立大学における私学助成金
  • 国や自治体からの設備整備費補助金

などが挙げられます。

これらの経費が投入された研究設備・機器は公共財として捉えられることから、ニーズに合わせて広くシェアすることが原則とされています。

また、競争的研究費についても積極的に共用を進めていくことが求められていることは、先述のとおりです。

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