新型コロナウイルス感染症に関連した技術シーズ集

新型コロナウイルスによって高まる医薬品の需要

2022年は新型コロナウイルス対策関連の需要もあり、 バイオ医薬品製造の大型受注も見られます。

しかし、バイオ医薬品及び再生医療等製品は 、従来の化学合成とは異なる製造技術 ・ノウハウが必要であり、従来の低分子医薬品に比べて 開発 ・ 製造コストが高いです。

【出所】 厚生労働省(2021).『医薬品産業ビジョン2021 資料編』を元に筆者作成https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000831974.pdf

日本のバイオ医薬品の市場規模は、アメリカの10分の1、ヨーロッパの4分の1

日本のバイオ医薬品の市場規模・開発案件数を比較すると、アメリカの10分の1、ヨーロッパの4分の1となり、日本におけるバイオ医薬品の市場はこれから発展途上であると言えます。

【出所】 厚生労働省(2021).『医薬品産業ビジョン2021 資料編』を元に筆者作成https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000831974.pdf

この記事では、新型コロナウイルス感染症対策や新型コロナウイルスによる新たな生活様式に関連して産総研が取り組みをはじめた技術シーズ、「新型コロナウイルス感染症に関連した技術シーズ集」を紹介していきます。

技術シーズ集は感染予防・治療方法・健康管理・ニューノーマルライフスタイルの4つのカテゴリ別に分類しております。

【カテゴリ1感染予防」】 光触媒・光電極を用いた次亜塩素酸・過酸化水素の生成

 食塩水や炭酸水のなかで光触媒*1をコーティングしたシートに太陽光を当てると、細菌やウイルスを不活性化する次亜塩素酸や過酸化水素が生成します。

 本技術は、家庭やオフィス、食品関係の事業所などでの簡便な殺菌・消毒としての用途が期待されます。

※1 光触媒とは太陽や蛍光灯などの光が当たると、その表面で強力な酸化力が生まれ、接触してくる有機化合物や細菌などの有害物質を除去できる環境浄化材料です。

【引用元】MAKOTO SERVICE『光触媒とは?光触媒を室内で使用するメリット・デメリットを紹介』
https://www.makoto-service.com/news/6942/

【カテゴリ1「感染予防」】光触媒による抗菌・抗ウイルス効果

産総研ではWO3に銅助触媒を担持した可視光応答性の光触媒(Cu-WO3)を開発しました。この光触媒はVOC(揮発性有機物)などを含む様々な有機物を効率的に水とCO2に分解できます。

Cu-WO3光触媒は一時的に光を当てると抗菌・抗ウイルス作用を持つ一価銅イオンが生成し、その作用が暗所でも長期に保持されます。

結果、Cu-WO3光触媒をタイル、食器、つり革、マスクなどにコーティングすることにより、日常生活での抗菌・抗ウイルス効果が期待できます。

【出所】産総研『新型コロナウイルス感染症に関連した技術シーズ集』https://www.aist.go.jp/aist_j/covid-19/seeds/index.html

【カテゴリ2「治療方法」】吸入療法用一酸化窒素ガスの不純物評価

医療用の一酸化窒素(NO)製剤(濃度800ppmの窒素希釈NO混合ガス)は海外で製造され、米国においてはCOVID-19による肺炎の救急療法(臨床試験)でも使用されています。

本テーマでは、同製剤の安全性向上と将来の国産化に資することを目的として、種々の充填条件等で一酸化窒素/窒素混合ガスの不純物とその経時変化の評価を実施しています。

【出所】産総研『新型コロナウイルス感染症に関連した技術シーズ集』https://www.aist.go.jp/aist_j/covid-19/seeds/index.html

【カテゴリ3「健康管理」】心とからだの健康のセルフマネージメントを目指した技術開発ーストレスを受けた心の健康状態を検知するためのモニタリング技術の開発

ストレスやそれによる睡眠の乱れは、うつ病などの精神疾患や糖尿病などの代謝性疾患のリスクを高めることが知られています。

当研究所で開発したヒトの不眠症への外挿が可能な『ストレス性睡眠障害モデルマウス』を用いて、睡眠の乱れから疾患の発症に至る前までの未病段階を早期発見するためのバイオマーカー※を開発しています。

本テーマでは、睡眠の乱れから疾患の発症に至る普遍的なメカニズムを探索することにより、心の健康をセルフマネージメントするための基盤技術を開発しています。

※バイオマーカーとは、ある疾患の有無や、進行状態を示す目安となる生理学的指標のことを指す。

【出所】厚生労働省『職場における心とからだの 健康づくりのための手引き』https://www.mhlw.go.jp/content/000747964.pdf

【カテゴリ4「ニューノーマルライフスタイル」コロナ禍における人間行動の測定手法の開発

AIを用いて電力ビッグデータを解析することにより、緊急事態宣言が出た地域における在宅率や「新しい日常」の生活様式を把握します。

現在開発中の電力ビッグデータ分析技術を活用することで、緊急事態宣言や自粛要請の実効性、時間経過とともに生じる「緩み」を高い時間解像度で分析することが出来ます。

【出所】三浦麻子(2020).  非常事態における人間の意思決定プロセスと態度・行動. 国民生活研究. 第 60 巻第 2 号
https://www.kokusen.go.jp/research/pdf/kk-202012_1.pdf

おわりに ベンチャー企業は外部との提携が重要

今記事では、技術シーズ集を感染予防・治療方法・健康管理・ニューノーマルライフスタイルの4つのカテゴリ別に分類し、それぞれの事例を紹介いたしました。

新規のバイオ医薬品及び再生医療等製品の開発において、 ベンチャー企業の果たす役割が増加しつつあります。

しかし資金力に乏しいベンチャー企業が自ら大規模設備を保有することは難しく 、 開発を進めていくには 外部事業者との連携が必要です。

【出所】 厚生労働省(2021).『医薬品産業ビジョン2021 資料編』を元に筆者作成https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000831974.pdf

こうした中、 バイオ医薬品及び再生医療等製品の業界では  製造 ・ 開発 を CMO(医薬品受託製造企業、 CDMO(医薬品受託開発製造企業)に委託する水平分業が国際的に進展しています。

これからも高まる医薬品需要に応えられるような世界になることを願い、本記事を締め括らせて頂きます。

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